愛知県Tさま 祖父母さまの真心こもる桐たんす 

50年程前のお母さまのお嫁入り時の中洋(真ん中の中台が扉)と昇りのお揃いの夫婦たんすです。お母さまの幸せを願い、祖父母さまが真心を込めて、おあつらえになられたと伺いました。お家の住み替えを機に、鉄脚や金物交換などのアレンジも加えてご自宅でお使いになりたいとお考えになり再生されました。

中洋たんすの上台・中台・下台をそれぞれ鉄脚に載せて、高さを揃えて横に並べて使用できるよう、チェストタイプの桐たんすとして再生しました。東に面した腰高窓とバランスが合うようにチェストの高さを合わせられ、朝の光から桐たんすを守るため、UVカット加工のカーテンをご準備されました。扉の前飾りのハンドルに取り付けた房は、オリジナルの伊賀くみひもの房です。丁寧に組み合わさった絹糸のくみひもは、几帳結びで春に咲くかたばみの三枚の葉を表し、やさしく桐たんすに寄り添っています。

昇りたんすは、お着物などを収納する桐たんすとしてお使いになるということで、そのままの形での再生になりました。納品後には、娘さま方が桐たんすの引出しを開け閉めすると他の引出しが開くという現象を生まれて初めて体験して喜んでおられるご様子をお聞かせくださいました。元々気密性のある造りをした桐たんすでしたが、膨らんで引出しが重くなっていたため、少しずつ削って仕込み直しをしました。また、お母さまと一緒に着物の仕分けをして、桐たんすに収める予定と伺いました。娘さま方が引出しを開け閉めされたり、Tさまがお母さまと着物を仕分けされる時間を楽しまれるご様子を想像すると、桐たんすを贈られた祖父母さまの真心がご家族に伝わっていくようで、とてもあたたかな気持ちになります。