桐タンス修理~時代仕上げ(時代茶)

七月に入り、こちらは梅雨真っ盛り
といった空模様が続いています。
雨の影響で、大きな災害が起きない
ことを願うばかりです。

もうすぐ七夕。
素敵な七夕飾りの短冊をいただいたので、
玄関のユーカリの枝にくくり付けて
みましたが・・・、

やっぱり笹の方がいいですね。
織姫と彦星の短冊。彦星の方は、
青海波(せいがいは)の文様です。
広い海からの恩恵を感じさせ、
無限に広がっている波の文様に、
「未来永劫へと続く幸せへの願い」と、
「人々の平安な暮らしへの願い」が
込められた縁起の良い柄だそうです。
お願い事を書かずとも、
短冊にぴったりの文様でした。

書かずとも、また言わずとも、
思いや願いを伝えることができる、
このような日本の伝統文様。
便箋や小物、手ぬぐいなど、
様々なものに描かれているので、
家族や大切な方への贈り物にも
添えてみたいと思います。

さて、本日修理した桐タンスですが、
木地修理と調整を終え、塗装の前までで
一旦ストップしていました。
お客さまと仕上がりの色についての
最後の打ち合わせ後、いつでも塗装に
取りかかれるように、焼いてスス落とし
まで終わらせていました。
次のお客さまの桐箪笥に取りかかりつつ、
梅雨空の様子を見て、塗装に適した
比較的湿度の低い日を狙っておりました。

今日を逃すと、またしばらく雨が
降り続く予報。曇り空と湿度計を見て、
「今日塗る!」と決断しました。

塗り始めるにしたがい、湿度も下がり、
ストーブを焚かなくても、砥の粉が
程よく乾いてくれました。

時代仕上げは、表面をバーナーで焼いて、
ススを落とし、砥の粉をのせて仕上げる
桐タンス特有の仕上げ方法です。

表面を触ると、凸凹しており、これは、
柔らかい冬目(木目の幅が狭いところ)が、
堅い夏目(木目の幅が広いところ)よりも
多くススとなって落ち、夏目部分が残る
ためです。
他の樹種とは違い、桐は冬目の方が
柔らかく、これも焼き桐ならでは。
力強さを感じる焼杉とはまた違って、
上品でやわらかな風合いに仕上がります。


ぷっくりとした木目にうっすらと
砥の粉がのり、好きな雰囲気の木目です。

再生をする昔の桐タンスは、
時代仕上げが似合います。
桐タンスの雰囲気や佇まいからも
そう感じるのですが、
特に昔の桐タンスは前面の桐材が、
現在の桐タンスのように、真っ直ぐな
柾目が使われたものではなく、
木目が曲がっていたり、幅が不揃いの
ものや小さな節もあることが多いです。

時代仕上げは、このような一見短所と
思われるようなところを持ち味として
活かしながら、その桐箪笥だけが持つ
おもしろさや味わいを深めてくれる
ように思います。