桐タンス修理~引手の下には当たり鋲

先日、こちらは四月の雪が降りました。

目を疑うとは、この事かと・・・。

以前にご近所の方から、「4月でも
降る時あるでな」と聞いていたのですが、
実際にうっすらと積もった雪を前にすると、
一瞬訳が分からなくなってしまいました。

さて今回は桐箪笥の引出し前板のお話です。
桐は柔らかな素材なので、着物など
中に収納する品物をやさしく守って
くれる半面、桐自体は傷が付きやすく、
長く使われてきた桐箪笥の表面は、
下の写真のように傷や凹みが見られます。


特に引出しの前板は、開けたり閉めたり
するたびに、指が当たって擦れたり、
爪で引っかいたりしてしまうので、
深い傷になっていることが多いです。

また、引出しに付いている金物(引手)が、
昔の桐箪笥は、上の写真のように、
下座が無いタイプが多いです。
下座付きのタイプよりも引出しの表面に
傷が付きやすいです。

深い傷が付いた桐箪笥を眺めながら、
持ち主だったお祖母さまやお母さまは、
この引出しを一番よく使っておられた
のかな・・・とか、
日常よくお使いになるものや
お気に入りの何かをしまわれていた
のだろうか・・・など想像しています。
私の母は背が小さな人で、
開けやすい高さの引出しに
常日頃必要なものをしまって、
頻繁に開け閉めしておりました。
背の高さも一番よく使う引出しに
影響しそうですね。

話が少し逸れてしまいましたので、
引出しの前板の傷に戻ります。
こういった広範囲の深い傷は、
表面を鉋で削っても無くならないので、
傷の幅分一列をごそっと欠き取って、
新たな桐材に張替えます。

白い部分が新たに張替えた部分です。
塗装すると張替えた部分は
分からなくなります。

そして、ここでようやく今回のタイトルの
登場なのですが、下座のない引手の下には
当たり鋲を付けます。
ぷっくりとした丸い小さなものが
当たり鋲です。

爪のひっかき傷や引手自体が当たって、
桐箪笥に傷が付くのを防ぎます。
引手を持ち上げやすいという利点もあり、
上品でかわいらしいと思います。

金物の中でも最後の最後に
取り付ける当たり鋲。
こんなに小さなものですが、
桐箪笥を長持ちさせるための
なくてはならない金物です。