桐たんす修理例 三重県伊賀市Kさま

今回ご紹介する修理例は、お祖母さまの
お嫁入り時の桐タンスです。
お母さまが、そのあとを引き継がれ、
洋服を収納してお使いになっていたそうです。
そして、これからはKさまが受け継がれます。

再生前の桐たんす

お母さまのお家の片付けを機に、
再生されることになった総桐の小袖たんす。
他にも同じような小袖たんすや扉付きの
桐たんすが、油単をかけて大切に
保管されていたそうです。

天丸(天板と側板の角が丸い)で、
本体前面の周りには唐木の紫檀があしらわれ、
角を守る機能性と美しさが感じられます。
元々表面は白っぽいとのこ仕上げだったと
思いますが、とのこが剥がれて、桐の地肌が
あらわれ、経年変化により茶色っぽくなった
状態でした。

再生後の桐たんす

仕上がりの色は時代仕上げ(時代赤)です。
木目も美しく映え、明るくやさしい風合い       
となり、経年変化した金物の色や周りの紫檀
とも良く合っています。

再生前:棚板と引出しの隙間



木地修理後:引出しの上端に材を足して調整

再生後

材の収縮により、引出しと棚板の間に大きな隙間が
生じている所は、引出しの上端に材を足して
仕込み直しを行い、気密性を高めます。



鍵の部分の金物(引明け・蓋を右にスライド
させて開ける)は、丸型であることが多い
のですが、星のような珍しい形をしています。
家紋なのか、デザインなのかも分からず、
「家紋 星型」などで検索してみると、
「鞠挟みに星梅鉢 」(まりばさみにほしうめばち)
という家紋に近いのかなと思いました。


Kさまから最初にお問合わせをいただいたのは、
ちょうどお母さまのお家を片付けられている時
で、伊賀のご自宅までご主人と運んでこられた
と伺いました。
はじめにお話を伺った時から、桐たんすや
ご家族への思いが伝わってきましたので、
そのお役にたてることができ、大変嬉しく
思います。

以前の再生の跡が見られなかったため、
3世代目で今回が最初の再生となりました。
長い年月を経た桐たんすですが、
本体や引出しの四方とも蟻組接ぎで組んであり、
とても強固な造りをしていますので、
これからも末永くお使いいただけると思います。